【注意】
※かなり辛口なので本作、原作に強い思い入れがある方、否定的な文章が嫌いな方は、この先読むのをお控え下さい。
【リコリス・リコイル】
作画☆☆☆☆☆ キャラ☆☆☆☆☆ 脚本☆☆ 構成☆☆ 音楽☆☆☆☆
総合68点
【キャスト】
錦木千束 安済知佳 井ノ上たきな 若山詩音 中原ミズキ 小清水亜美 クルミ 久野美咲 他
3話で限界
いわゆる3話切りになりました。
正確には、1話2話はそれなりに楽しめたが、3話でこの作品の性質が分かり視聴を辞めた。という経緯です。
もちろん大ヒットしたアニメなので、ほとぼりが冷めた頃に・・・。と考えていたので、改めて今レビューします。
理由は色々とありますが結論としてこの作品は、
ルサンチマンを抱いた10代前半から20歳くらいまでの男性向けアニメ
という印象です。
要は私のような社会人経験者向けのアニメでは無かった、そして、脚本的に若者の未熟な自己肯定感をくすぐる内容になっており、少し不健全さを感じたことが視聴を辞めた主な原因です。
※ルサンチマンとは・・・鬱屈した強者への実行性の無い恨みや妬み。
アレな世界観
導入を簡単にまとめます。
平和で安全綺麗な東京、日本人は規範意識が高くて優しくて温厚
法治国家日本首都東京には危険などない、社会を乱すものの存在を許してはならない
危険は元々無かった、平和は私たち日本人の気質で成り立っている
そう思えることが一番の幸せ
これは、暗躍するリコリスの映像をバックに語られます。
明るい声でテンポ良く語られること、そして文と映像との差異によって、現実の日本そのものを揶揄している内容にもなっています。
さらに、考え方としてはあなたの見ている今この現実はもしかしたら、裏の物事がありそれを操っている人達がいる。気付く人と気付かない人に分かれますよ。
と示唆されています。
この巧妙な日本下げとメインターゲットの自己同一性の固まっていない若者に対するメッセージ性。いわゆるリベラルでアレな方面の人達の手口と似ているのです。
小島監督
小島監督が絶賛したことで、SNSでは祭りのようになっていましたが、元々小島監督は、いわゆるアレ寄りの性質です。ピースウォーカーあたりからですかね、かなり平和に対する意識が限界突破した印象です。よく言えば意識が高い。
人権意識の高まりが激しいアメリカで仕事をしている小島監督から見て、このアニメはよく日本の現状を示唆している。と思い、嬉しくなり絶賛したのでしょう。
才気溢れるが故に、結果的に揉めて日本を出て独立したので、思う所もあるのかも知れません。
ガンアクション
本作のメインにも等しい部分ですが、ツッコミ所が満載すぎて手が追いつきません。
まず、普通に弾丸避けます。
そして、実弾ではなくゴム弾でプレート越しにダメージを与え、数メートル吹き飛ばしています。しかも通常口径のピストルです・・・。
プレートの性能が上がり、プレート頼みの動きが浸透している現代においては完全なファンタジーです。
現在アメリカの執行機関においてはストッピングパワー信仰を辞め、小口径でプレートの隙間を狙い打つ。という方針に変わりつつあります。
なぜなら、犯罪者側の装備のレベルが上がり、高品質なプレートを装備している場合が増えたからです。
せっかく世界観はこだわって作った仮の現実世界なのに、このあり得なさすぎるガンアクションを見せられると、陳腐なものに思えて来ます。
なぜか公式で護身術講座もやっており、おいおい・・。と思ってしまいます。全てズレてます。
なぜ3話で切ったか
決定的だったのはたきなにキツく当たる、フキ含む元同僚との模擬戦で勝利後、たきながフキに放った言葉なのですが、
「これでおあいこですね」
・・・いや、君が命令違反したのが原因でしょ!
自分がしたことは棚上げして被害者気取りですか。おあいこじゃないでしょ。
さらには帰りの電車内で、
スカッとしたねぇ
ええ
いや、君たちがやったことは勝手な行動して怒らせて、その上相手を煽って模擬戦やって、倒すっていうマッチポンプだからね?
このシーンを経て私は、リコリス・リコイルの脚本についていけないと思い、3話で切りました。
フキについて
フキ側に立つと、チームをまとめる役目において部隊の統率が一番重要です。
戦地では一つの乱れが部隊の壊滅に繋がります。
人命をかけて指揮をしていたフキには怒る権利がありますが、たきなには全く弁解の余地もない行動です。
しかも千束は現場リーダーである、フキの指揮がまずかったと責任転嫁して責めており、通信障害が起きること自体が〜と、どんどん責任を周りに撒き散らしています。
事実は一つ、たきなが命令違反し独断行動を行った。
それだけなのです。
気づいた方もいると思いますが、フキは社会でのいわゆる管理職的な存在なのです。
そのような若者を抑圧し管理する側への安いアンチテーゼをこのやり取りで行っているのです。
この部分は後述の章「未熟を肯定する」にも書きたいと思います。
若年層の厚い支持
リコリス・リコイル、通称リコリコは、特に若年層からの厚い支持を受けています。
「リコリコみたいな本格的なガンアクションアニメ見たことがない」
「千束とたきなの関係が尊い」
「自分の身の回りにも言えることが多くて、元気が出た」
等、大絶賛の声が大きいです。
それはなぜか?
二次創作の盛り上がり
ある最新のソーシャルゲームのアンケート内容に、
選ぶ基準に二次創作の盛り上がりは重要ですか?
と言う項目がありました。
わざわざ大手のゲーム会社がアンケートで問うその意味。
そこがリコリコの若年層人気の秘密にも繋がっています。
今の若年層は二次創作が溢れて身近な世界に生きています。
pixivなどのサービス、Twitterで活動するクリエイターの存在、通信販売の充実、など。
当たり前のように、二次創作に触れ、消費しています。
公式へのリプで二次創作の画像を送りつける等、元々グレーだという認識がない人も多いのも事実です。
その為、作品と二次創作が基本的にセットになっているのです。
この作品は二次創作が盛り上がっているから観てみよう、この作品は二次創作があまりないから観るのやめよう。と思うことが当たり前なのです。
この数字はpixiv、Twitterで簡単に把握することが出来ます。二次創作の盛り上がりがトレンド、コンテンツの盛り上がりなのです。
イナゴ絵師
そして、その需要を見込んだ一部の同人作家は、より早く盛り上がった作品の二次創作を世に出し収入を得て、稼げなくなったらすぐにいなくなり、別の作品へと移る。という行動を取ります。
これがイナゴ絵師です。
残念ながら、このような同人作家達が作品の初期トレンドを作っているのです。
イナゴ絵師の目に留まるかどうかは、キャラ同士の関係性によります。
そしてリコリコはキャラの造形の良さと、百合という強力な武器によって、イナゴ絵師の目に留まり初期トレンドを制したのです。
なぜ百合が受けるのか
最近のアニメ作品のトレンドにおいて、百合(女性同士)は隠れたトレンドです。
なぜ、今まではややアンダーグラウンドだったカテゴリが、最近流行り出しているのか。
VTuberの百合営業という文化
一番影響が大きかったポイントだと思います。
2020年あたりからの爆発的なVTuberの流行。社会的ステータスの上昇。
それに伴って、事務所側、いわゆる箱側が仕掛けたのが百合営業です。
百合営業とは・・・女性の演者同士でカップルのようなやり取りをさせ、それを視聴者に見せること。
この営業の効果を箇条書きします。
・男性より女性が好きと勘違いさせる
・絡みによって関係性が構築され、箱推しが増える
・スキャンダルの影が消える
これらは声優業界でもよく見る構図でしたが、声優ファンをも取り込んだVTuberがそうなるのは当然だったのかもしれません。
てぇてぇというネットスラングも誕生し、この効果によって、若年層の間で安心して推せる存在として百合が認識されるようになりました。
そして、二次創作でもこのような百合営業の延長にある、イラストや漫画がTwitter等で大量にリツイートされており、ムーブメントとなっています。
価値観の変化
若年層の価値観の変化は、弱者化や草食化といった問題にすり替えられがちですが、
社会全体の価値観の変化に敏感に反応していると考えるのが自然です。
最近の児童向けアニメにも言えることですが、多くの創作物の視聴者へのアピールとして、憧れや特異性というものから、親しみ、共感性というものへ変化しています。
多様性を叫ばれ、性のカテゴリが広まった社会において若年層は、自分と似た何かや、幸福、安心感、を求める傾向が強くなっています。
自分と似た他者を知ることで自己の性同一性を測ろうとしているのかもしれません。
そして、アニメなどの創作物においては、
あんな恋愛がしたい!ヒーローになりたい!から
見守りたい!共感したい!に変化しつつあるのです。
このような変化も若年層に百合が流行している一つの要因だと思います。
未熟を肯定する
3話でのフキとのやり取りが、
若者を抑圧し管理する側への安いアンチテーゼと書きましたが、このような脚本は意図的なものだと思っています。
この作品は、メインターゲットをかなり強力に絞っている作品です。
ルサンチマンを抱いた10代前半から20歳くらいまでの男性向けアニメ
つまり、その年代の人が見て受け入れられた、肯定されたと思う部分がないとダメなのです。
フキとのやり取りは、どう考えてもたきなが悪いです。千束も責任転嫁して見苦しいです。
ですが、それは関係ないのです。さらに言うと、どちらが悪いとか常識ではとか。
そう言うのはいらないのです。
未熟な若者が抱く鬱屈した感情、考え方そのまま肯定することが目的なのです。
たきなも千束も未熟です。どう考えても悪いことをしたのに相手のせいにして、責任転嫁をしているのですから。そして勝手に自己完結する。でも、考えてみてください。
若者ってこうじゃないですか?
みなさん、中学生や高校生の時、このような今思い返すと身の毛もよだつような未熟さに覚えはありませんか?
つまり、リコリス・リコイルはそのような若者たちを強力に肯定することで、作品としての訴求力を高め、経済的な利益に繋げる。そのような明確な目的を持ったマーケティング主導のアニメなのです。
リコリコが怪作たる所以
あなたがみている世界はダメな世界ですよ、反抗しましょう。それが賢いこと。正しいこと。
未熟でも良いのです、それを指摘する方がおかしいのです。
可愛いキャラを出しましょう、あなた達の大好きな百合ですよ。安心して推しなさい。と。
そうやって過剰に若者を接待して、経済的利益を生み出す。
やり方自体が健全ではないように感じます。
さらに世代ごとの分断を生む結果になることを危惧しています。
このようなことを言うと、その意見自体が悪だと糾弾されます。若者に対する指摘=悪となります。皆自分に都合の良いことしか信じなくなるのです。
敬愛する脚本家として、田中仁を挙げますが彼は児童向けアニメであっても、「夢を見るということは、夢を見れる自分でいることだ」と作中で示唆しています。
要は夢見るためには、努力も必要だと。これを50話の中にうまく構成し、散りばめ、自然と胸に届く内容になっています。
このような脚本が素晴らしい脚本で、素晴らしい作品とは過剰に接待することではないのです。
大ヒットの事実
批判的なことを書きましたが、リコリス・リコイルが大ヒットしているのも事実です。
オリジナル作品の強みを活かし、マーケティングを綿密に行いターゲットにしっかり訴求する。この点において、リコリス・リコイルはどのアニメにも出来なかったほどに、強烈に成功しているのです。
そのような新しいターゲットへの訴求の形を作った作品として、本作は怪作として歴史に残るでしょう。
2期について
ブルーレイの売り上げがかなり好調だったので、ほぼ確実に2期はあります。
ここまでの売り上げで無かった例がほぼありません。CDや関連作やグッズも好調です。
キャラが続投するかはわかりませんが、劇場版等も考えられていると思います。
制作側としては劇場版で、大きな仕掛けを用意したいと考えてるはずです。何か記録を塗り替えるかもしれませんね。
2期の確立は95%です。