アキバ冥途戦争4話から考える、労働の対価【新社会人向け/ブラック企業/アニメ】

【注意】

※本文はアニメの世界観に合わせた少しハードな内容です、あくまでアニメレビューですので、ご理解下さい。

引用元:https://akibamaidwar.com

社会風刺多めの4話

リアルな任侠世界をメイドが闊歩するという、荒唐無稽な本作ですが、4話に関しては社会風刺の意味合いが強いものとなっています。

社会人になると付きまとうある問題を端的に表しています。

 

それはブラック労働への過程

です。

 

これから社会へ出る予定の方、もしくは社会人1年目の方に向けてこの記事を書きます。これから書く内容を覚えておき、ヤバいと思ったらすぐ逃げて下さい。

企業内のSV(調教師)とは

企業とそのグループ企業。もしくは本社とフランチャイズ。その関係性において、どうしても発生する人材、サービスのばらつき。売上の減少。

それらを解消するために派遣されるのがSV、サービスバイザーです。

本作では調教師と言われる存在ですね。

 

引用元:https://akibamaidwar.com/story?ep=4

主な仕事は

・人材の育成

・店舗の売上向上

・本社に通達

です。

 

どのようなことを行うかは、企業によってかなり違いますが、ケダモノランドの方針としては、従業員をしっかりおひねりを捻り出せる人材に育てることが主な目的のようです。

任侠世界のメイド喫茶ですから当然ですね。

 

その調教師の手法を解説したいと思います。

実際企業の新人研修などで用いられている方法です。

 

今の時代においてはポピュラーな手法ですが、アニメというわかりやすい教材がありますので、価値はあると思います。

研修という名の・・・

共同生活

多くの研修が山奥などの研修施設で行われます。

寝食をともに過ごし、普段とは違う非日常な環境を作ります。

外界との連絡手段も遮断し、山奥なので脱走も難しいです。

本作では、すでにアキバという空間で非日常な任侠世界、さらに共同生活をしているので、すでにこの条件は満たされています。

否定に次ぐ否定

挨拶から始まりまず否定。

料理も作らせ、そして否定する。

これを繰り返すことで、尊厳を奪い、自信を無くさせる。

どれだけ理不尽に行えるかが、調教師の腕にかかっています。理不尽であればあるほど良いのです。

混乱させ考える力を奪うことで、麻痺していきます。本作の調教師はその点においてはかなり手練れです。

共同作業

何か形になる目標の設定です。

これは暗示を長期記憶にすり替え、解けにくくするものです。

モニュメントを作り、常に身近な、できればすぐ見れる場所に置きます。

本作では屋上ですね。作業として積み重ねることが大事なのです。連帯感も生まれます。

睡眠

本作では、

朝5時起床

夜中の2時まで作業

というスケジュールを送っていましたが、この状態を人が続けると、何も考えられなくなります。常に頭は空っぽ、反論する気力も失せ、指示に対して従順に従うようになります。

そして、異常な疲れを脳が察知し、シグナルを出します。

それが異常なハイテンションです。

こうなると本人は気持ちが良いので、さらに状況は悪化していきます。

危機的状況

本作では、屋上から突き落としその後説得しています。

危機を迎えた精神状態では、受け入れるべきという思考が強くなります。

しかも、事前に謝り下手に出ることによって、心理的ハードルも下げています。

その結果、なごみを始めとんとことんのメンバーは調教師を受け入れてしまったのです。

 

※実際新人研修で救急車が出動した例は多々あり、死亡事故も起きています。反復運動を延々と繰り返させる等、身体的にも追い詰めることによって従属性を高めるのです。

帰属意識

「この腕がグループだ。どれだけ傷ついてもメイドを守る!そしてメイドはおひねりちゃんを捻り出す。そういう血の通った関係なんだよ!」

 

というセリフがありますが、これはグループに対する帰属意識を高め、自分達はグループのおかげで存在できる、そしてグループに利益をもたらすことによって存在意義がある。と思わせる、グループ=家族への変換です。

 

まともに判断できない状態でこれを叩き込むと、従順でどこまでも無理をして利益を上げる人材が出来上がります。

そして次の章で書きますが、共同体としての行動に重きを置くようになります。

 

引用元:https://akibamaidwar.com/story?ep=4

共同体として

反省会

就労後に集められ、お互いの悪い部分を強烈に伝え合います。

新しい気づきを得ることが出来るので仕事にも活かせるし、良いことばかりじゃない?と思うかもしれませんが、真の目的は違います。

 

冷静に考えてみて下さい、普通に生きていたらそこまで悪い点をしかも強烈に指摘されることがありますか?しかも同僚にです。ほぼありませんよね。そこが重要です。

 

判断力が落ち、帰属意識も芽生え始めている状態で、悪い部分を強烈に同僚に指摘される。

最初は腹が立ち、恥ずかしい思いをしますが、続けているうちにこう思うようになっていきます。

 

あれ?私今までこんなに本音で話したことあったっけ?

ここまで本音で指摘してくれる人いたっけ?

これが本当の仲間なのかな・・?

 

アイスブレイク(人との打ち解け方)の手法として、わざと本音を伝えるというものがあります。普段見えない部分を見せられたことによって、相手も嬉しくなり本音を伝えあえる関係になります。

 

このような手法を極端かつ、悪用したのが本作の反省会なのです。

 

これも実際の企業ではよく見る手法で、調教師へのヘイトを減らし、仲間同士の結びつきを強め、さらに仲間同士を競争させる効果があります。

グループ内格差

ゆめちがおひねりちゃん10万円を達成し、調教師に褒められている時に、他のメンバーはどう思っていたか。

 

仲間として誇らしいけど、次は私も結果を出したい!

仲間として成長したい!

 

このような心理状況になります。

そして、普段の就労時も目標を達成するために、粉骨砕身で頑張るようになります。

自分への利益が一切無いのに、です。

 

これがいわゆるやりがい搾取の一例です。

グループ内で格差をつけることによって、グループ内の信用=利益としてメンバーに認識させるのです。信用がグループ内通貨になるのです。

 

そして、グループに利益をもたらす人材はグループによってさらに守られ、尊ばれるという思考の入れ替えも行われます。

 

利益以外の頑張る目的を作り出すことによって争わせ、グループのみが肥え大きくなって行くのです。

しぃぽんという反逆者

ギリギリまで追い込んでも、思うように調教が進まない人もいます。

本作ではしぃぽんですね。

おかしいことをおかしいと思い、発言する。メイクも落とさない。

 

このような人が出ると、見せしめとして粛清されます。

 

本作では調教師によるガキ使ばりのケツ叩きで済んでいますが、実際ではもう少し危機的状況にもなりかねません。

 

まず同僚からすると、とても可哀想な人に見えます。

こんなに素晴らしい思いと目標を持って、日々成長出来てるのにこの人は何を言っているのだろう。

 

そして、

この人を救ってあげないと。大事な仲間だから。

その思いが暴走した結果、同僚同士での粛清という惨事にもつながる例もあります。

 

本作ではそこまでの状況にはなっていませんが、暗転と音で示唆されていたようにも思います。この点については色んな意味でギリギリなのでここまで。

しぃぽんの洗礼

脱走をやめた後、メイクを落としたしぃぽん。まさに洗礼ですね。

新しい自分へと生まれ変わったのです。

 

その後はしっかり従順に働き、おひねりちゃんもしっかり納める。

そして、調教師に抱きしめられ、迫真のオッケーだもの!!

 

ここは正直笑ってしまいました。好きなシーンです。

こうして、メンバー全員が同じ方向を向き、結果を出すチームとして生まれ変わったのです。

 

引用元:https://akibamaidwar.com/story?ep=4

最終日それから

泣いて惜しむ面々

実際の研修現場でもよくある光景ですが、最終日は泣く人も多く、感謝の気持ちを口々に述べます。

 

そして、一緒に乗り切った仲間との連帯感。仕事に対するやりがい。

それら全てで胸が満たされています。

 

この大変な状況を仲間と乗り切ったという感覚が、調教には必須で。

誰かが欠けてもチームとして成り立たない、全員いて初めてチームなんだ。

もうお分かりですね・・・。このような人達は仕事を辞めないのです。

 

どれだけ辛くても、苦しくて理不尽でも、一緒に乗り切った仲間、そして自分自身を裏切ることは出来ない。そうして、自分の身を削り限界まで働くのです。

その後の労働

その後、各自配置され働くことになりますが、研修での暗示は抜けず。

ずっと、自身の成長、グループの成長のために、身を粉にして働きます。

 

しかし、現実は厳しく、研修のように導いてくれる人が常にいるわけでもありませんし、仕事というものは思い通りにならないものです。

 

思ったより結果が伸びない、グループにとって価値の無い人間になってしまう。

という恐怖が頭の中を支配します。

 

作中でも、なごみが強引な営業をしたり、ゆめちが無理して働いてげっそりしていたり。

完全にブラック企業、ブラック労働と化しています。

暗示が解ける時

割と早くにしぃぽんは、店長に会いに行っています。

 

元々価値観がしっかり形成されている人は、暗示が解けるのが早い傾向にあると思います。

しかしそれは情報に溢れた現代社会である種、アナーキーな側面。ともいえます。そのような人は少ないのも現実です。

 

しぃぽんはメイクで自己を表現し、常に割り切った言動で捉えどころのない人物です。

もしかしたら、メイクを落とすという洗礼時に、メイドとして働くいつもの自分は一旦捨てたのかもしれません。

 

そして、研修が終わったら取り返してやろうと思っていたのかもしれません。相当メンタルが強くないと出来ない芸当です。

 

引用元:https://akibamaidwar.com/story?ep=4

「それだけはやめて!!」

「なんのためにメイドしてるんですか?グループのためでしょ!?」

 

と言うゆめちとなごみに対して。

 

「違えーっしょっ!!この腐ったアキバの中でも楽しいって思える瞬間あっから・・・!」

「豚ぁども戻ってこいやぁーー!!!!」

 

と叫びバズーカを放つしぃぽん。

 

象徴である成果物を壊すことによって、正気に戻す。

しぃぽんなりのケジメだったのでしょう。

 

なごみの絶叫。

 

人は暗示が解けそうな時混乱し怒り狂います。

自分が自分で無くなる恐怖によって正気を失うのです。

まとめ

正気に戻ったとんとことんのメンバーがいつも通り営業している所に、調教師が訪れます。

 

そして、調教師をぶん殴り

 

あーしはこのメイクが最強で最高なの

勝手に決めんな

 

としぃぽんが凄みます。

 

それを当たり前のように見ているなごみ達。

多分ですが、この人達研修前後の記憶が消えてます。

暗示が解けると普段の自分と乖離し、記憶自体が無かったことになることもあります。

 

それを見て、もうどうしようもないと悟り逃げ出す調教師。

彼女はグループから依頼され失敗は許されない身です。

そう、彼女もまたグループの被害者なのです。

 

「いってらっしゃいませお嬢様」というのも、作中では死にゆく者への手向けとして使われている言葉なので、彼女もあまり良い余生を送れないかもしれません。

ブラック企業に勤めてしまったら

アメリカ海軍、Navy SEALs ネイビーシールズの選抜試験中に行われる4週間目の五日間、通称ヘル・ウィーク。

 

五名ほどのチームごとに分かれ、五日間空腹、睡眠不足の中、反復運動含を含んだ訓練を行います。しかも、上位のチームは睡眠時間が少し追加されるというボーナス付きです。

 

寝そうになったら大声でどやされたり、理不尽に罵倒されたり。ちょっとプールに沈められたり。丸太ごと海に浮いてろと言われて低体温症になったり。

とにかく体力、精神ともに限界まで追い込みます。実際死者が出るほどの過酷な選抜試験です。

 

お気づきかもしれませんが、これらは上記本文の調教師、研修の手法。とかなり似通っています。ブラック企業のやり方ということですね。

しかし、研修を受ける人達はただの一般人です。ましてや軍のように手厚い補償もありません。

 

あなた方は兵隊でも特殊部隊でもないのです。そして任侠世界に生きているわけでもありません、ブラック企業かもしれない、何かおかしい、と感じたら全速力で逃げることを選択してください。

 

それがあなたと、あなたの大事な人を守ることに繋がることを、覚えておいて下さい。