※全話試聴レビューです。原作含めたネタバレあり。
困り眉のエルフからしか得ることの出来ない栄養がある
エルフと言えばプライドが高く高潔と、創作ファンタジーでは描かれることが多い種族ですが、本作の月島で400年続く高耳神社のご神体エルフ、エルダは真逆に近い性格です。
常に猫背で困り眉、声もかすれて小さい、食事も雑で部屋も汚い、内気な引きこもり。
巫女である小糸はそんなエルダのことを【引きこもりのダメエルフ】と思っており、普段から厳しく接します。
ですが、1話の段階で小さい頃の憧れの人が実はエルダだったということが判明し、その後は小糸が戸惑いながらもエルダとの信頼関係を築いていきます。
エルダはプラモデルやゲームが好きないわゆるオタクで、PC片手間にレッドブルを所望し、神事の際は居眠りする。そのような実際にダメエルフなのですが、「変わらないものがあるってのは安心するよ」という作中のセリフにもあるように、不老不死で神社のご神体であり続けるエルダは皆に尊敬され愛されています。
この不老不死であるがゆえに小糸が先に老いて死別することは決まっており、基本は日常コメディなのですが、どこかせつない世代を超えた友情話のような魅力もある作品です。
原作再現度の高さ
本作の特徴として原作再現度の高さが挙げられると思います。
まずは作画ですが、画像で比較するとこのもんじゃを食べる小糸のシーンは恐らく原作からある程度トレスし、アニメに落とし込んでいるように思います。
本来であればキャラクターデザイナーが作った動きやすいモデルに従って画面が作られることが多いので、あまり原作要素をそのまま使うこと自体が少ないのですが、本作では止め絵で済むシーンでは積極的にほぼ原作と同じ絵柄、構図を用いています。
そのおかげで、キャラクター含め過度にデフォルメする必要が無くなり、動くことを意識してオブジェクトを配置し直したり、余計な演出を足さなくても良いので、原作の世界観そのままでアニメ化することに成功しています。
原作自体絵が綺麗で見やすいのでこのような手法になったとも捉えられますね。
次に構成ですが、原作の1話もしくは数話ごとに完結する物語を上手くワンクールに落とし込んでいます。
例えばアニメ2話のもんじゃを食べに行く前の、小柚子が商店街の人に話しかけられるシーンはアニオリで、豊洲市場での一幕は7話の初めに移動、小柚子にスポットライトが当たる話に上手く繋がるように構成されています。
継承の儀も第一巻終盤の話ですが、アニメでは3話に構成されており、視聴者が早い段階で本作の世界観と設定に馴染めるような構成になっています。
暗闇の中行脚するこの話は好きなシーンだったので、完璧にアニメとして表現されていて嬉しかったです。
その他にも、オタマジャイロ、お取り寄せ様、ヨルデとハイラのエピソード、そしてSRカード、こまちゃん探偵エピソード(絶対カットだと思っていた)等、余すことなくワンクールに詰め込んだ制作陣に拍手です。
江戸文化に触れる
毎話ごとに、江戸や東京の風習などを紹介し解説しており、深川江戸資料館に足繁く通っていた筆者からすると、これ以上ない位癖に刺さる作品でした。
当時の風俗を知ると現代に受け継がれている物と、無くなってしまった物がわかるので、感慨深いです。江戸の文化は本当にハイテクかつ粋で、それが民衆にまで浸透しているのが凄い所ですね。識字率の高さも世界的に見ても異常なほど高い。
日本橋から江東区まで歩くと、古い橋や水路等、街の移り変わりと過去の文化の名残を感じることが出来るのでおすすめです。そのままスカイツリーまで行っちゃいましょう。帰りは深川江戸資料館から東京都現代美術館に寄るのも良し、もんじゃストリートでもんじゃを食べるのも良しです。
そして、現在の東京自体が実は日本一レトロな街なんですよね。
田舎出身の筆者が言うのだから間違いありません。日本でいち早く近代的なインフラが整備されたのが東京ですからね、建物自体も古いものが多いんです。
江東区も良いのですが、明治外苑周り、新宿御苑周りも良いですねぇ。しかも近くには元々印刷街だった地域があって、ほら「君の名は」の・・・・
と、まぁ作中のエルダのような早口での癖語りはここまでにして。
この江戸の文化とエルフというファンタジーな組み合わせが、どうも海外のアニメファンに受けているようで、OTAKU ELFとして人気が出ています。
海外の人からすると馴染みやすいエルフが、日本文化に精通していること自体面白いでしょうし、どこか自分に照らす部分もあるのかもしれません。
【公式サイトリンク】
深川江戸資料館 | 公益財団法人 江東区文化コミュニティ財団
東京都現代美術館|MUSEUM OF CONTEMPORARY ART TOKYO (mot-art-museum.jp)
最終話とまとめ
やはり最終話は弓耳神事でしたね。
原作でも江戸前エルフの一章の終わりを感じさせる重要な話で、この話以外には無いと思っていました。アニメでも背景のビル群と神事の厳かさが、非日常で幻想的なシーンを生み出しています。
ただ、弓耳神事は前半のみで、最後はコメディで締める所がこのアニメらしいなと思いました。最初から最後まで、毎話知識欲を満たしてくれる楽しいアニメでした。
ぜひ海外向けの観光などとコラボして、レトロな東京と江戸文化をもっと伝えてほしいですね。本作を見て気になった方も下町を訪れてみて下さい。
きっとそこにはエルダと小糸が存在して、いつものやりとりを交わしているような景色と雰囲気が待っていますよ。
本記事は以上です。
ありがとうございました。
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