※ネタバレありです。
※やや否定的な部分のある記事になりますので、本作に思い入れのある方、否定的な文章が嫌いな方は読むのをお控え下さい。
はじめに
大前提として筆者はFFは9、10、10-2、12、7Rをプレイしている普通のFF好きで、あまりFFらしさにはこだわりが薄い方です。
今回のFF16については体験版が出る前から楽しみで予約していました。
ただ、プロモーション時点から違和感を感じていた部分がプレイ中芽吹き出し、クリア後には様々な感情が出てきました。
本記事では、プロモーションについて、FF16とはなんだったのか?、FFに期待するものとは?を検証含めて書いていきたいと思います。
プロモーションの功罪
今回のFF16の発売にあたってのメディアへの露出。
その内容と発言についてなのですが、製品版を購入しクリアまで遊んだ身としては矛盾を感じた部分が多いです。
もちろん、セールストークは大事です。物を売るということは綺麗ごとでは判別出来ませんので。
なら、なぜ功罪と評したか。
それは、コアゲーマーとライトゲーマーの分断が起きてしまったからです。
筆者はのらりくらりとプレイしながら、クリアするまで結局2週間ほどかかってしまいました。その間は情報を遮断しまっさらな状態でプレイすることに集中していました。
そしてクリア後レビューを書いた後に、YouotubeやTwitterを覗いてみたのですが、かなりの地獄絵図に驚きました。
半数ほどが批判的意見に回り、もう半数は肯定的意見。
そして、批判的意見を述べているほとんどがコアゲーマーであり、逆に肯定的に評しているのはライトゲーマーでした。
そのどれもが極端で、まるで右傾化左傾化のような分断が起きています。
このような状態になったのは、プロモーションの内容によるもの、そして、FFのユーザー年齢層が問題だと思っています。
発売前のプロモーションについて
諸説ありますが、FFというIPはそれほど若者の支持が厚くありません。
これに関してはプロデューサーも「FFそのものが今の若い世代の人になかなか遊んでもらえなくなっている」とインタビュー内で認めています。
実際ソシャゲもすぐにサ終になりましたし、「今の若者はFFを知らない世代」というツイートが大バズりしたのは記憶に新しいです。
あるYoutuberが公開していましたが、FFの動画を見に来ている年齢層、そのコア層は30代前半から40代後半まで。そして、20代と10代が極端に少ないというデータでした。
※追記※FF16関連記事公開後、本ブログでも35~54歳までの訪問者が急増しています。
同様のデータをスクエニが持っていると仮定すると、売る側は「懐古ユーザー」を捨てた新装FFとして若者にリーチする為の手法は取りづらく、FF15等で離れてしまったであろう「FFを好きだった人達」に対して強く訴えかける必要があったのだと思います。
そして、重厚な大人向けストーリーや、洋ゲーのように進化したFFを謳い、アクションに拒否反応を示す人に向けたメッセージを強く発信し、FFへの理解が詰まっている作品としてプロモーションしたのではないか?
・・・ですが、クリアして思ったのはFF16はかなりライトゲーマー向け、さらに言うならばFFを全く知らなくても大丈夫、【あまりRPGをプレイしたことが無い人向け】の作品でした。それはゲームを作っている現場の方達は認識していたと考えるのが自然です。
要するに、
【ライトゲーマー(新規)向けの製品を、コアゲーマー(懐古)向けに強く訴求し売ってしまったのではないか?】
ということなのです。
コアゲーマーの求めるもの・・・
FFらしさ、ストーリー含め重厚な世界観として蘇ったFF、奥深いアクションへの期待。
ライトゲーマーの求めているもの・・・
新規IPのような新鮮さ、わかりやすいフックのあるストーリー、簡単アクション。
と想定すると、
コアゲーマーは「言ってたものと違う!」、ライトゲーマーは「え?それなりに想定内だったのですが・・・」となり、この両者の言い分は一生噛み合うことがありません。
これが、プロモーションによってユーザーが分断された結果の考察です。
次の章では、発売直前の生放送での発言を、製品版と照らし合わせて検証したいと思います。ある程度、プロモーションの問題部分と言えるものが見えてくるかもしれません。
※懐古という言葉は新規と対になる言葉として、年齢層を示すものとしてわかりやすいので使っています。過去の名作や遺産であるシステム、FFらしさをを否定する意図はございません。
カウンター的(フォローアップ)生放送
「カットシーン多くない?」
フォローアップ
実際は・・・
徐々に体験版の召喚獣アクショントライアル程度の頻度になる、とのことでしたが、
とんでもなく多いです、最後まで。カットシーンの連発です。
これは、終盤急激に増えるサブクエストも含まれています。異常な多さでした。
というより、ラストのオリジンなんて数十歩歩いたらカットシーン、また歩いたらカットシーン、落ち着いたと思ったらロング版が流れる。というような状況でとてもそうは思えません。
しかもストーリーは矛盾だらけで集中出来るかというと・・・。
召喚獣アクショントライアル程度になるというのは、サブクエストやリスキーモブ等のコンテンツで総量が増えるので、相対的に同程度になる。と捉えることが出来ますね。
「日本語のリップシンクがなぁ・・・」
フォローアップ
実際は・・・
作業量が多くどうにもならなかった、とのことですが、本来AIはその作業を助けるためのものなのですが・・・。
FF7RはAIを活用して日本語リップシンクを実装してるのに、なぜ出来ないのでしょうか?プラチナゲームスやキングダムハーツの開発陣に参加してもらっているのに、そのようなAIリップシンクの技術面でスクエニ内で協力しないのはなぜ?
使ったとしても不自然なので、アニメーターに一つ一つ手動で調整してもらった。と強調していましたが、スクエニの「機械学習によるリップシンクアニメーション自動生成技術とFINAL FANTASY Ⅶ REMAKEのアセットを訓練データとした実装実例」という公開されている資料の中にその部分についての改善方法も記載されています。
なによりも、FF7Rの方がキャラが生き生きと動き、喋り、感情を表現しているように見えるのは気のせいでしょうか。
「フレームレート落ちるよぉ」
フォローアップ
実際は・・・
街中で表示されるキャラが多い場所では、CPUがネックとなってフレームレートが落ちると説明されていましたが、普通に序盤の森でも平原でも、なんなら砂漠でも不安定です。感覚的にはパフォーマンスモードでも25~45辺りを行ったり来たりという印象です。
配信で見るのとは~大きいモニターで~とのことですが、むしろ逆効果です。自分でやる方が酔ってしんどいですし、大画面なんて見てられないと思います。
不思議なのは、出力解像度を落とすと本来であればピークパフォーマンスが上がるのですが、FF16はほぼ変わりませんでした。これは熱暴走のことを考えたマージンとしての制限なのか?という疑問は残りました。
あとわざわざ「フレームレート落ちるよぉ」という煽りにも捉えかねない、言い回しを使う必要性は無いように感じました。
「ブラーとカメラがキツイよ!」
フォローアップ
実際は・・・
これに関しては迅速な対応でした。
発売後一週間ほどでしょうか、上記の機能が追加されました。
まぁ、最初から入っているゲームがほとんどなので、なんとも言えませんが。
この辺りはソウルハッカーズ2のダッシュ機能追加アップデートと同じ香りがします。
「バトル単調じゃない?」
フォローアップ
実際は・・・
まずアクションですが、確かに単調では無くなります。
そして終盤になるとビルド幅が広がり、自分だけの戦闘スタイルを模索する楽しみが生まれ、最後まで楽しかったです。
次は召喚獣バトルについてですが、「ゲームを進めると凄いことになってくる、クライヴを操作しているのと変わらない位に」というセリフ通りの展開になります。
今思うと、この時言えるギリギリの発言であり、プレイしていてなるほど!!と驚きました。
この点は矛盾なく、もしかしてストーリーよりバトルの方が元々手応えあったのでは?と思ってしまいます。
「ミニマップ欲しかった!」
フォローアップ
実際は・・・
うーん・・・、という感じです。
リスキーモブを探すときかなり不便じゃないですか?
他はいいんですよ?トルガルが道を示してくれるので。
でも、リスキーモブはテキストを頼りに出現場所を探し出す必要があります。クエストマークも無しです。
ここにいないかぁ、じゃあ、次はあっち行ってみるか・・・・とぐるぐる回ることになるのですが、フレームレートが安定していない上に、ちょくちょくエリアマップで地形を確認することになるので、なかなかの苦行です。
こちらもオンオフで設定出来ればより探索を楽しめたかもしれません。
「急にPS5本体が止まっちゃう!壊れそう!」
フォローアップ
実際は・・・
筆者は最後までフリーズもクラッシュもなくプレイすることが出来ました。
もちろんPS5の掃除はしていません。※パフォーマンスモード
そして、海外のフォーラムから声が上がり始めたのが最近です。
その内容は24章にあたる場面の最後にグラフィック優先モードでプレイしていると、高確率でクラッシュする。というもので、事例の報告が相次いでいます。
これはある程度報告に共通性があり、再現性も高いものです。
つまり、PS5側とユーザーに問題があるという文言を残しているのに、ここに来てFF16自体に問題がある可能性が浮上しているのです。
現段階では、処理落ちなのか、熱暴走なのか、プログラムのクラッシュなのかはわかりませんが、PS5を掃除すれば万事OKではないことは確実だと思います。
「やっぱり画面暗いんだけど?!」
フォローアップ
実際は・・・
この部分が一番違和感を感じた部分です。
HDRに最適化しているので、SDRモニタでは見え方が変わる・・・と。
これって、結局エンドユーザーの環境が悪いと言ってるのと同義なんですよね。
しかも、ノルヴァーン砦は作中でも屈指の暗さで一番暗いステージという話でしたが、製品版では余裕で同じかそれ以上に暗いステージがバンバン出て来ます。それも終盤までです。
これは、一番暗い=それがMAXであっても他も同等の可能性がある。というレトリックだったのでしょうか。
※HDR600対応モニターである、DellG3223Qを使用しています。
FF16とはなんだったのか?
ここまで読まれた方は、
「さてはアンチだなオメー」
と思われてるかもしれません。
ですが、これらの検証はFF16とはなんだったのか?制作陣はどのような思いで作り出したのか?を推し量る上で重要な要素なのです。
まず、ストーリーレビューでも書きましたが、FF16は主にサブクエストでの後付け設定が多いです。ストーリー自体に悪影響を与えているとしても大量に存在します。
その目的は細かい部分へのツッコミ防止と、序盤しかやっていない、もしくは寄り道せず最速クリアレビューをして、批判的な意見を言うYoutuberやブロガーへの対策なのではないか?と思っています。
実際、いましたよね?この人サブクエやってないんじゃない?って矛盾を指摘されたレビュワーの方が・・・。後付けによって、このような意図的な批判潰し、初見殺しを行っているのです。
さらに、発売直前のフォローアップ生放送では、わざわざ批判とも取れるようなコメントを探し出して全力で否定し、補足しています。
しかも8項目のうちの6つが、嘘と捉えられても仕方がない誇張された内容で・・・、
どこか無理やりになってません?
とクリア後改めてこの放送を見ると思うのです。
正直、言ってたことと違うな・・・とプレイ中随所で思わされるのはゲームとしての体験を微妙に損なうものでした。このフォローアップ生放送が無かった方が最後までモヤモヤせず楽しめたと思います。
第一、そういう意見は無視でも良いと思うのです、買うつもりの人間は予約して買いますし。ライトゲーマーは気にしない点だと思うのです。
では、ここで一旦結論ですがFF16とはなんだったのか?
それは、恐らくですが・・・
第三開発が挑んだ対アンチ決戦兵器なのです。
なぜアンチと戦わないといけないか?
それは上記の「発売前のプロモーション」に書いた通り、「FFを好きだった人達」に買ってもらうのがセールス上必要であり、FF15もしくはそれ以前からの根強いアンチに理解してもらった上で、自衛し戦う必要があったのです。
発売前にネガキャンされると初動売り上げが落ちますし、発売後にネガキャンされてもじわ売れが期待出来なくなります。
それに、チャレンジ要素が多い本作について、必ず批判的意見が出ることも覚悟していたのでしょう。
最終決戦の時、クライヴは言います「究極の幻想を打ち破る!」
これは、恐らく制作陣にとっての「ファイナルファンタジー」に向けての想い、言葉をクライヴに乗せたものだと解釈しています。
クライヴとは破壊の象徴です、マザークリスタルを壊し、現在ある仕組みを否定し、人の業と願望を背負い、理そのものを壊す、人であり神です。
創世と破壊、新たな始まり。
つまり、「新たなファイナルファンタジーを作る」その自負を持ち続け、矛盾をはらんだままFFを破壊し、アンチや懐古ユーザーに嫌われても本作を生み出したいと願う。
クライヴとはFFにとっての第三開発だったのです。
そして、この戦いはまだ終わっていません。
DLCやソシャゲへの展開でのストーリー補完、完全版の発売、PC版&他ハード、フリープレイ化。など、まだまだ奥の手は残っているので今後も目が離せませんね。
【まとめ】FFに期待するものとは
FF16が発売され、様々な議論が交わされ、その中でも批判的な意見に多いのが「FFらしさが無い」というものでした。
ざっくりしていて、特に20代前半や10代の方からすると「まずFFってなんだよ」と思うことでしょう。
この部分は各々の好きなFFによって変わるのが厄介です。
例えば筆者はFF9が一番好きです。
この段階で恐らく、
1~5までが至高と思っている方にとっては、「浅いな・・・」
FF10好きの方には、「いや、FF10以上のストーリーは存在しない!」
FF7好きの方には、「キャラの魅力はこちらの方が上だ!」
などと思われてしまうでしょう。(諸説あり)
つまり、FFらしさとは各々の心の中にあるので、比較し語ること自体が不毛なのです。
筆者があまり過去作と比較してレビューしない理由もそこにあります。
ただ、一つそのらしさに意見するならば、基準となる作品を決めて毎回同じ効果音を同じタイミングで使うことは重要で、そのようなフォーマットを認識した上でチャレンジすることが、本来のシリーズ作品のらしさを守っていく方法だとは思います。
それがどうしても嫌ならば、新規IPか外伝として勝負すれば良いのです。ユーザー間で分断も生まれませんし、シリーズ作品として健全です。壊すことだけがチャレンジではありません。
そして、ゲームとして重要な本質とは面白いことです。
この点に関してはユーザーも制作側も同様だと思います。
面白いゲームを作っている時、面白いゲームをプレイしている時、生まれるもの。
それがFFらしさであり、皆が本当に求めている物なのだと思います。
制作側は、自分達のやりたいこと、アンチ対策や自衛、過剰な宣伝ばかりでは無く、まずはユーザーを見て、ユーザーと向き合って、共にFFらしさを作ってもらいたいですね。
※ストーリー編、良い部分編、今回の包括編、この三本で一つのレビューと捉えて頂けたら幸いです。
【FF16記事一覧】