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ネットワークビジネスに勧誘された話【マルチ商法/潜入レポ】Vol.16

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【人物おさらい】

M・・・セミナー主催者であり、Yが師匠と慕う人物

Y・・・ネットワークビジネスに誘ってきたフットサル場での先輩

R・・・Yの幼馴染で九州男児のようなイケメン

O・・・Yの兄弟子で巨漢の美容師

S・・・切長目のお姉さん系美人

U・・・ふわふわで明るいバラドル系女子

湘南と創始者2

創始者は座ったまま片膝に両手を当て、じっとこちらを見ています。

私は用意してきた一つ目の質問、「今自分の立場で出来る努力とは何でしょうか?」を投げかけました。

 

創始者「なるほど・・・、君は真面目で見込みのある人のようだね。まずは師匠の話を素直に受け止めること、他の弟子のことも尊敬しアドバイスを貰うことが大事だ。そして、これからは君が成そうとすることを止めようという人達が出てくるかもしれない。」

 

創始者「私達はそのような人間をドリームキラーと呼んでいる。」

 

創始者「君に嫉妬し、君の活躍が妬ましく思い、足を引っ張ろうとしてくる。だが、そんな人間に私達は負けてはいけないし、耳を貸してはいけない。初志貫徹で皆で良い人生を目指すんだ。」

 

一通り創始者の話が終わり、「もうないのか?」といった視線をサングラス越しに向けて来ます。私は用意していた二つ目の質問を投げかけました。

 

「あの、30万円を貯めることには成功しそうなのですが、具体的にこのお金はどのように使うものなのでしょうか?先に知っておく必要はありますか?」

 

・・・・。

創始者は少し黙ります。サングラスで表情は読めませんが、顎を引き体が一瞬強張ったように思いました。そして、口を開きます。

 

創始者「Mに任せているから私から話せることは何も無いんだ、そのおかげでこうやってサーフィンをやりながら悠々自適に暮らせてる。良い人生だ、だから君達にも良い人生を送ってもらいたい。そんな思いで今もビジネスの仲間を集めている。」

 

創始者「だから君も、Mという師匠の言うことを聞いて導かれれば必ず良い人生を送ることが出来る。努力次第だ。期待している。」

 

創始者「あー、もうよいかね?Mよ」

 

キッチンにいたMを呼び出す創始者。

微妙にはぐらかされた気もしましたが、これ以上詰めて聞くわけにもいかないので、お礼を言い握手を交わし、弟子たちの元に戻りました。それと入れ替わりでMが創始者の元へ行き、何かを話し合っています。

 

M「では、これ以上お時間を取らせるわけにはいかないので、今日はここまでとします。皆、頂いた素晴らしいアドバイスをしっかりと覚えておくように☆⤴」

 

締めの挨拶を受け、ぞろぞろと暗い廊下を歩き部屋から出ます。

ドアを抜けると目が眩むほどの日差しと穏やかで広大な海。まるで、さっきまでの出来事は夢だったんじゃないかと思わされるような風景でした。

 

メンバー全員がアドバイスに感動したようで、ファミレスに近い海側のコンクリート舗装部分に腰掛け、皆あまり喋らず風を感じています。

おもむろにOが海を眺めながらつぶやきます。

 

O「俺らってよぉ、まだまだだよなぁ。もっと頑張らないとMさんみてぇになれねぇわ。」

 

S「確かにね・・・。創始者に話聞いてもらって思ったけど、結果に対するハードルが違うんだろうね。」

 

Y「いや、俺に比べたらマシでしょ・・・、俺何も成し遂げてねぇわ。」

 

R「俺もだ・・・・」

 

U「・・・・。(泣きそうに下を向いてる)」

 

ロケーションも相まって、青春ドラマのワンシーンのようなことを言い出す面々。

当の私は、実はそれほど立ち入った話をせず、そこまでアドバイスも刺さらなかったので、雰囲気を壊さないように黙りながら細目で海を眺め誤魔化していました。

 

ただ、ドリームキラーという言葉は少し引っ掛かりを持って頭の中に残っていました。仮に善意で、アドバイスを与えても「嫉妬」「悪意」と捉えるなら、従順で自分の認めた人の意見しか認めない人間が出来上がってしまうのでは?それは小さいコミュニティにおける常套の・・・・

 

Y「おぅい!!君はどうだったんだよ!!ちゃんと質問できたか?アドバイス凄かったよな?」

 

R「そうだぞ!!もう今日は飲もう!せっかく湘南来たんだし。」

 

O「お前らほどほどにしとけよぉ、今日なんの為に来たか考えて行動しろよな。」

 

YとR「はいっす・・・。」

 

おもむろに青春スイッチが入ってしまったYやメンバーに絡まれ、何か大事なことを考えていたような、モヤモヤは吹き飛び、すでに今夜食べに行くラーメン屋の話題で一杯になっていました。

 

湘南にオレンジの差し色が映え始める中、飽きるまで話し、飽きたら海岸を歩き、駅へ向かい電車に乗り遠ざかる海を皆で眺める。

一つの夏の思い出としては完璧な一日でした。ただ、これはネットワークビジネスの集まりで虚構の友情だという事実は少し心に刺さり、寂しい気持ちにもなりました。

 

なんとなく、自分でもわかっていたのだと思います。

終わりが近づいていることが。

 

ネットワークビジネスに勧誘された話【潜入レポ】Vol.17へ続く